SKYMARK

スカイマークといえば、B737-800のスカイインテリア仕様あたりで採用されているレカロシート。シートピッチの狭さを感じさせないゆったりとした座り心地とリクライニング加減。シートを倒さなくても眠れるし、逆にテーブルで仕事も出来る。JALのクラスJよりも遥かに快適。

低価格なのにレカロシートの高級感ある座席を供給するという意外性の戦略、しかも全席電源付き。これにB737の機材統一による多頻度運行という徹底したコスト削減で鬼に金棒のビジネスモデルを作り上げたのが西久保さんの功績。

一時期物議を醸したサービスコンセプトも私は別に問題ないと思うし(ごく当たり前のことを書いているだけだから)、むしろ低価格であることにより安かろう悪かろうの客が集まりやすいこともあるだろうから、予めサービスコンセプトで防波堤を築いておいて、変なクレームを防ぐ一理があったのだろうと思う。

経営理念も結構好きだ。

~遥かなる未来に届く事業を創る~
どんな未来がやって来るのか深く考えてください。
自分たちの仕事が未来に通用するかを想像しましょう。
そこで存在できるものこそが今すべき事業です。
過去をなぞっても新しいものは生まれません。
未来に届けられる会社を創りましょう。

2011年に成田シャトルを始めた頃までは良かったのだけど、その後A330とかA380に手を出したのがボタンの掛け違いの始まりだった。A330のグリーンシートは、飛行機に乗る頻度が少ない人にとっては驚きの広さでPRする価値は大いにあったのだが、私なんかはどうしてもレカロシートと比較してしまう。見た目の広さはグリーンシートだけど、座り心地はベージュのレカロシートには遠く及ばない。グリーンシートという名称もイマイチであった。A380については言うまでもない。

スカイマークが就航した空港からJAL/ANAの運賃がグンと下がり、その空港からスカイマークが撤退すると運賃が元の水準とまでは言わなくても値上げされる。そして撤退した跡地にはジェットスターなどのLCCが就航することで、スカイマークの戻る場所をなくしていく。しかも春秋航空日本を除くLCCは全てJAL/ANAの子会社。見事なスカイマーク潰しである。

もっとスカイマーク自体評価されてもよかったのに、とも思うのだが、制服の件やら、叩かれる要素の方が表に出てきてしまう。そして、何よりもラウンジを持たない、マイレージを持たないという顧客にとってはドライ過ぎるサービスが、大手に乗るかスカイマーク便に乗るかという選択の際の優先順位を下げさせてしまったことは間違いないだろう。大手が高い時期だけど、スカイマークなら安いから今回だけ乗るか。こういう考えの客は多かったように思う。

飛行機はまだまだステイタスの要素が強い。保安検査場を通過してラウンジに直行し、出発10分前になったら秘密の扉のようなところから搭乗口に出る。そしてすぐ乗れる。JALだったら改札機でFLY ON会員のピロ~ンという区別音が流れただけで、思わず「どうだ」顔になってしまうことだろう。この大手の麻薬にハマってしまったら、真っ先にスカイマークを選びましょうという気にはならないだろう。

このようにビジネスマンを中心としたヘビーユーザーの心をつかめないのは、スカイマークにとって究極の痛手と言える気がする。そして、この意味においてスカイマークが大手に追いつくことはあり得ないのかもしれない。

しかし、スカイマークが第3極として生き残ってこそ航空業界の健全性が保たれるのは間違いない。今は大手のやりたい放題で、しかもLCCも操れることで大手の高価格帯とLCCの低価格帯を住み分けして、客に不満を言わせずに日本の空を制している。

何とか運航停止させずに、知恵で乗り切ってもらいたいものだ。