影響力の科学

■長く楽しい人生を送る
ブリガム・ヤング大学のジュリアン・ホルト=ランスタッド博士は、何万人もの人々を対象に、食事や喫煙の習慣から、配偶者の有無や運動にいたるまで、あらゆることを調査し、何が長寿につながるのかを解明しようとした。7年にわたる追跡調査の結果、彼らはある答えを得た。誰も予想しないことだった。

この地方のきれいな空気は、平均余命にわずかながらプラスの影響を与えた。しかし、その要因はインフルエンザワクチンの接種や運動ほど重要ではなく、禁酒や禁煙ほど重要でもなかった。研究者たちを最も驚かせたのは、予測因子として最も大きかったのは人間関係であることだった。

親しい人間関係は長寿に2番目に大きな影響を与えた。困ったときに頼れる人、問題を抱えているときに相談できる人、ピンチのときにお金を貸してくれる人、残業で遅くなったときに子供のお迎えに行ってくれる人などとの関係である。

こうした感情的なつながりが不可欠であることは予測可能だったが、完全に予想外だったのは、長生きするための最も重要な予測因子が、研究者で言うところの「社会的統合」だったということだ。

これは、一日を通し、どれだけの人と話したり、つながったりしているかである。クリーニング屋であったり、職場の同僚であったり、ヨガ教室の人であったりと。これらのつながりは必ずしも親しい友人ではなく、むしろあなたが関わる人の数だ。

ホルト=ランスタッド博士の再調査によれば、長く楽しい人生を送りたいのであれば、最も重要なことは、人に囲まれ、深い意味のある人間関係と緩やかな付き合いの両方を築くことだという。アマゾン・プライムを解約して、実際に近所の店に行って、レジで人に会い、必要なものを買うのがベストかもしれない。配達で節約した時間は、私たちの寿命を縮めるだけかもしれない。

(中略)

現代社会で私たちが便利さから得ているものは、実は私たちを孤立させているかもしれない。(P.52-54)

■イケア効果
私たちの誰もが気づいていないのは、この体験に多くの労力を費やしたがゆえに、イケアの家具に、品質とは不釣り合いな価値を見いだすことだ。もちろん、これが気に入らない人もいるだろうが、イケア家具が完成した状態で家に届くよりはずっと価値があるのだ。これは科学者たちが「イケア効果」と呼ぶもので、私たちが力を注いだものを大切にするようになるという、人のバイアスとして、十分に立証されている。(P.80)

結局のところ、共同体にいるということは、共に旅をするということなのだ。目標が一致しなければ、私たちは異なる旅路を歩むことになり、価値観が一致しなければ、そこに到達するための方法について合意することはできない。だからこそ、強いコミュニティには、価値観の一致とニーズの充足があるのだ。(P.175)

■ディスニー
ディズニーがデータを調査したところ、「こんなにお金がかかるのか」「稼ぎは僅かなのに」と、私たち買い手の後悔が続く時間は、人によって異なる。しかし、23分間というのは、私たちがそのモヤモヤを乗り越えるには十分な時間なのだ。

つまり、チケットを買ってモノレールに乗れば、マジック・キングダムの正門に着く頃には、その後悔の念を忘れているか、少なくとも安心して、地球上で最も幸せな場所を楽しもうとワクワクしているのだ。

テーマパークの専門家の中には、これはパークレイアウトの幸せな副次的効果に過ぎないと指摘する人もいるが、もし意図的なものだとしたら、これは私がこれまで見た中で、最も見事に人の行動心理を重視した設計の例だと思う。

ディズニーは、「体験の一瞬一瞬を楽しんでもらい、ビジネスを成功させる」という最終目標を実現したのだ。(P.195)

■定期購読の選択事例
<定期購読シナリオ1>
オンライン:59ドル、選択率16%
印刷物:125ドル、選択率0%
印刷物&オンライン:125ドル、選択率84%

<定期購読シナリオ2>
オンライン:59ドル、選択率68%
印刷物&オンライン:125ドル、選択率32%(P.199)

■フラッグシップ(主要イベント)
これは最も一貫性のある経験で、毎週、毎月、またはその他の決まった周期で行われる。インフルエンサーにはインフルエンサー・ディナーがある。スプリングボクスのようなスポーツチームには練習、そのファンたちには試合が、宗教には奉仕活動、クリエイティブ・モーニングには朝のイベントがある。ある組織にとっては、このイベントはコミュニティへの入会や、会社でのオリエンテーションであり、別の組織にとってはメイン・プラットフォームである。(P.234)

■豪華なディナー
顧客を口説くとき、高級な場所でプライベート・ディナーを催し、顧客を引き込んだり、売り込みの後に絆を深めたりするのが一般的だ。だが、私は一般的なディナー・パーティーを無駄だと考えている。
(中略)
ディナーの内容が重要なのではなく、一緒に料理をする時間と、テーブルを囲んで行うゲームの内容が重要だからだ。一般的なビジネスディナーの構造では、永続的な絆を築くのは難しい。
(中略)
夕食が必要な場合は、テーブルの形式や人数を変え、互いに信頼関係を築けるようなアクティビティを考案しよう。(P.258-259)

■ギフトの贈りかた
問題は、ほとんどのすべての企業ギフトがゴミにしかならないということだ。企業ロゴ入りTシャツやドリンクカバー等々、ガラクタの山が増えるだけだ。そうではなく、誰に贈るのか、なぜ顧客にとって特別なものなのか、あなたや会社がどうしてそれを贈るのかを考える必要がある。
(中略)
ギフトロジーは、特注の彫刻入りキッチンナイフから、ギフトされる側の愛する人からのメッセージをデザインした手作りのマグカップまで、あらゆるものを作ってきた。秘密基地のようなディナー体験を運営する者として、これらは私の仕事と一致しているだけでなく、上質で大切な贈り物であり、頻繁に使われ、私という人間を思い出させる役割を果たしていることがお分かりいただけるだろう。
(中略)
誰も欲しがらない、誰も気づかないようなガラクタを贈ることはやめ、ギフトロジーのようなプロに相談し、会社や顧客にとって何が正しいかを考えてもらうことをお勧めする。間違った贈り物は予算の無駄遣いだが、正しい贈り物は相手の関心を引き、信頼感や、つながり、帰属意識を高める。(P.260)

■オンライン・コミュニティには、少なくとも3種類の活用可能な技術があり、さらに多くの技術が常に登場している。人々を見つけ、ミーティングを組織することができるウェブサイト(Meetupなど)、人々が同時にオンライン・プラットフォーム上にいる同期型コミュニティ(Zoomなど)、そしてグループに投稿し、人々が数日後、あるいは数年後に反応することができる非同期型コミュニティ(Facebookなど)がある。(P.312)

■オンラインコミュニティの重要な考慮事項
・コミュニティの価値観を明確にする:インターネットはクレイジーな無料開放サービスである。行動指針がなければ、コミュニティはすぐに崩壊してしまう。
・適切なプラットフォームを選ぶ:コミュニティを構築するテクノロジーによって、双方向性は大きく変わる。Facebookのコミュニティプラットフォームではサイロ化したコミュニティやグループを作ることができるが、XやInstagramで結束感を高めることは不可能に近い。
・人々がいる場所に行く:あなたが大きな影響力を持っていたり、人々がわざわざあなたのサイトを訪れたり、あなたのアプリをダウンロードして使ったりするような独自の価値提案を持っているなら、人々がわざわざ探してくれるかもしれないが、ほとんどの場合はそうではない。
・コミュニティの地理を理解する:人々が分散していればいるほど、オンライン・コミュニティの恩恵を受ける。
・すでにあるコミュニティに参加する方が簡単かもしれない:すでに多くのコミュニティが存在しているのだから、あなたは活動的で繁栄しているコミュニティに参加した方が良いかもしれない。(P.315)


『影響力の科学』
ジョン・レヴィ 著、小山竜央 監修、島藤真澄 訳(KADOKAWA)