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「一年間の総括」

3月1日、現在の南初富の教室に移転してちょうど1年を迎えた。具体的には、旧・K塾の東初富からの移転に併せて、K塾にS塾の初富教室を統合した形になる。

統合の話はその約1年前から出ていて、K塾も新しくドメインを設けたり徐々に準備を進めて秋頃の公表に至った訳だが、当初は「K塾」と「S塾」の2つのシステムを1つの教室内に併設させるという考え方で準備を進めていた。S塾の教室長であったM講師と大学生のチューター各氏に引き続き勤務してもらうことを含めてだ。

S塾のシステムには私としてかねてから好意的であり、先の統合に至ったのもそういうことを塾通信の過去記事に書いたことがきっかけだった。今現在でも私としてはN先生に最大の敬意を持ち、稼動しておられるT教室がN先生の描かれている理想通りの教室運営をされていることに心より祝福と更なる発展への願いを持ち続けていることは間違いない。

しかし、統合を引き受けることになった初富教室の方はかなり厳しい状況があって、それは生徒数の問題ではなく、指導側の人材、マンパワーの問題が最大限にネックになっていた。

ただし、これはあくまで内輪の話であって、生徒・保護者からはまず気づかないことだっただろう。生徒・保護者から見て旧初富教室の良かったところは「先生が優しい」「アットホーム」「明るく楽しい」という印象が特に強かったと思う。生徒もそれぞれ楽しく通っていたと思う。

ところが生徒にとって楽しいということは、授業が楽しい、理解が出来て楽しい、成績が上がって楽しい、ということではなくて「塾に行くと友達がいて、一緒に話せて楽しい」ということも往々にして有り得るのだ。実際、数ヶ月前に某コベッツから転塾された生徒はその後者の楽しさで塾に通っており、それでは何のために塾に行かせているのか分からないという親御さんの疑念から、K塾に転塾されてきた。

もちろん、初富教室もこの後者の楽しさの強い塾だった。S塾は指導者がリードして進度を進めるというよりも、生徒が分からない所を持ってきて講師やチューターに質問をする、というスタンスの塾だ。これは、自学自習の出来る成績上位の生徒にとっては最良のシステムで、出来る生徒には指導者が下手なリードをするよりも、生徒自身に次すべきことを考えさせ、塾は質問に答えることでその生徒の取り組みを加速させる支援を行う、という大学受験の東進や代ゼミサテラインのような映像配信に近い、完成されたシステムになっていると言える。そういう意味でS塾のシステムは各種検定などの行事・イベントを含めてFC(フランチャイズ)化して全国に輸出できる体制であることは間違いないだろう。

しかし、問題は成績中・下位の生徒をそのシステムの中で泳がせるということは、生徒に通塾という名の「遊び」をさせていることに他ならない。成績中・下位の生徒には指導者の毅然かつ適切なリードが必要で、このリードが欠けていたのが旧初富教室の致命的な問題点だった。

教室内の私語が絶えず、中には授業中に笛を吹く生徒も居たと言う。その中で成績上位の生徒はうるさいなあと思いながらもそれが当たり前の環境として長年過ごしていたので、それなりに学習の結果を出していく。そういう生徒は良いのだ。問題は本来リードを必要とする学力層の生徒たちである。そういった生徒・保護者たちに適切な高校受験情報が提供されていなかったこと、塾内模試の成績表に関しても通り一遍の数字の伸び縮みを見るだけでプロとしての解析がされていなかった。

悪いことに目を向けると、昨年2月の統合前の全員面談で、面談開始時間になっても保護者が現れないため連絡を入れると保護者が「風邪で寝ていました。連絡しようと思ってたけど…」というケースや、「うちの子がここに通っているのは家から近いことと自習が出来ることなので、それが通う条件です」と断言する家庭もあり、一見問題ないように聞こえるかもしれないが、それは「指導者が介在していない」ことを示し、塾は生徒が勉強するためのただの場所貸しになっていた、ということを意味するのである。「これまで通り、うちの子の専用自習場所を作ってくれ」という要望すらあった。

3月の統合後には、入室して私の目の前を素通りする生徒もいれば、ため息ついて入室してきて床にドサッと荷物を投げ、こんばんはも言わずに「はい、お金」と片手で月謝袋を渡す生徒もいれば、「先生、コピー」とノートのコピーをせがむ生徒も出てくるし、恐らくこれまでは「○○ちゃん、疲れているのね、一緒にがんばろうね」と、先生が生徒の機嫌を取ったり手軽な便利屋になって生徒の言いなりになってきたのだと思う。

それが良い悪いということではなく、S塾の生徒・保護者にとってはそれが当たり前の環境で長年過ごしてきたのだから、統合によって教室の雰囲気がガラッと変わることは耐えられなかった生徒・保護者もいるだろう。逆に、言い方は悪いがある意味劣悪な環境に連れてこられて、あの3月4月5月を耐えて過ごした旧K塾の生徒は本当に偉かった。

もう一つ、私として温度差を感じたのはメールの返信の遅さ。遅いと言うよりも個別に連絡したメールが返ってこないことが9割であり、改めて電話を入れると「メール返すのだとは思いませんでした」と言われたこともある。遅いというのも数時間ではなく数日単位の遅さで返ってくるということも。

早々に辞めていかれた方々に共通しているのは、字を丁寧に書くとか、これまでの学習内容が本人の学力にそぐわないから適切なレベルに落として教材を用意しましょう、と「本当の話」をすると気を害して「今日は行かずに辞めます」という例も複数あった。これはどういうことかと言うと、恐らく、今までは授業でも面談でも日常の連絡シートでも良いことばかりを言われていたのだと思う。指摘や苦言のようなことを言われたことがない、完全な「お客様」扱いをされていた。

ということは保護者にとって塾は対等にリスペクトしあう関係になっておらずに、塾を対「人」ではなく商品として見る(=下に見る)(塾は私たちの言うことを聞く、塾に言えばしてくれる、塾はいつでも私たちを気分よくさせてくれる)構図が固まっていたから、少しでも不本意なことを言われるとフンと保護者はへそを曲げてしまったのだと思う。

そういう流れでS塾の生徒の割合が1年を掛けて減っていくうちに、本来のK塾の姿に1年をかけて戻りつつあるというのが現在の移転1年目を迎えたK塾の現状と言える。

数々の実態が見えてきた中で、私はS塾を併用することを断念し、2007年からこれまで独自のノウハウで築き上げてきたK塾を更に独自路線で進化させていくことに決めた。難関校受験に特化した塾もあるし、言葉通り「ゆるい」塾もたくさんある。それぞれ適した塾に行けばよい。K塾は先週の塾通信に紹介したT君・H君のお母さまが書いて下さったような取り組みを真正面から行える、小さい隠れ家のような、唯一の真っ当な私塾でありたいと考えている。

半分悪口のような印象を与えてしまったかもしれないが、私自身非常に勉強させてもらい、「指導力」について深く考えさせられた1年をこの機会に総括させていただいた。

M講師との契約も終了し、再び本来のK塾として始動していきます。

「K塾通信vol.2​89-3/7」より非公開記事