JGC修行

2月某日。
05:25、船橋駅発羽田空港行き京成リムジンバス。

06:20頃、羽田空港T1。残り3回となったJMBクリスタル(2015年度)のラウンジクーポンでサクララウンジ。

【07:50 HND → JL687 →09:40 KMI】

HNDはHaNeDaで、KMIとは宮崎空港のこと。

宮崎空港は初めて。宮崎入りは1998年に福岡空港から宮崎の宮交シティまで夜行バスに乗って、先に現地入りしていた大学の先輩と合流して、宮崎から北九州経由で福岡まで九州半周して以来。

現在の愛称は「宮崎ブーゲンビリア空港」。

着陸した機内から窓をのぞくと、複数あるボーディングブリッジに緑と青で大きく「M」とロゴが描かれている。いよいよ飛行機を降り、そのボーディングブリッジを歩くと足元に青色の「防疫マット」が。口蹄疫防止のための消毒が空港の至る所で現在も行われているのだ。

数年前、空港の愛称が命名されたニュースを目にして「何がブーゲンビリアだ」と思っていたが、実際空港には花と緑がたくさん植えられ、確かにブーゲンビリアな空港になっていた。年季の入ったターミナルビルではあるが、その演出の努力には頭の下がる想いがした。

それにしても宮崎行きの機内は満席で、宮崎空港内も人でごった返していた。しかも若い人が多い。「そんなに宮崎に用の有る人がいるのか」とまた疑問に思って1階を歩いていたら、野球・サッカーのキャンプ地情報のボードと各チームのグッズ販売が中央のアトリウムで行われていた。巨人軍だけではない、ベガルタ仙台など多数のキャンプが宮崎で行われ、大勢のファンが集まっていたのだ。

私はスポーツにはほとんど関心がないので、そそくさと次の便の搭乗のために保安検査場へ向かう。

いつものようにタッチアンドゴーでICカードを保安検査場の機械にかざすが、エラーが出てしまった。係員いわく「同じ区間を複数予約されてます?それですと、どれかの便をキャンセルして頂かないと、乗れなくなってしまいます」。「考え尽くした行程と入金が台無しになるのか」と頭の中を不安がよぎりながら、1階のチェックインカウンターへ向かう。

「重複予約…怒られるかな」怒られるわけがないのだが、ビクビクしながらカウンターでICカードを差し出す。「福岡行きですね、タッチアンドゴーで搭乗されますか」「あ…はい…」よく分からないうちに手続きが済んでしまい、とりあえず保安検査場を通過できた。

ここで分かった重要なことは、同一区間を同一日に重複して予約した場合、タッチアンドゴーでは機械がどちらの搭乗なのかを判別できないため、座席指定が済んでいてもタッチアンドゴーが使えず、カウンターでの処理または搭乗券を発券する必要があるということだった。

これは後になって考えてみれば、まあそうだなと思えるのだが、エラーの出た現場で顔面蒼白になっている時には何が起きたのかさっぱり分からず、よもや「修行」中断ということにもなりかねない。

【11:15KMI → JAC3626 → 12:05FUK】

KMI、慣れないな。宮崎空港のコードだ。FUKはFUKuokaで覚えやすい。

宮崎空港の一番右奥、5番搭乗口。
小学生?中学生?の頃に祖父と初めて飛行機に乗ったのがJASの羽田・徳島間だったような気がする。そのJASの子会社だったのがJAC日本エアコミューターで、JASと共にJACも今はJALグループに吸収されている。

ボンバルディアDHC8-Q400という型のプロペラ機だ。

5番搭乗口から階段を下りて、滑走路を歩いた先にその小型機は停まっていた。
10段程度のステップを登って機内に入る。JAL幹線の搭乗時といえばデイヴィッド・フォスターの「I will be there with you」だが、ここはローカル路線。何だろう?小田和正っぽい?邦楽?が流れている。

プロペラが回る轟音と共に出発。加速度もジェット機より大きいような気がするが、高度も軽々とどんどん上昇していく。

宮崎・福岡便なんて乗る人いるのかしら、なんてとんでもない。ほぼ満席で、頭上の荷物収納も全て埋まっている。

福岡空港のローカル線といえば第1ターミナル。現在は第2ターミナルに移った国内幹線の旧の建物で、いま進められている福岡空港リニューアルの後半では改築されるらしい。

福岡空港も普段以上に人が多いような気がする。流れる人々を眺めながら外のバス乗り場のベンチで一息。

福岡のバスも博多周辺の路線は新車が多いが、「西鉄バス大牟田」と書いているようなローカルバスはあからさまにボロい。

【14:20FUK → JL3633 → 15:05KMI】

さっき宮崎から福岡に着いたばかりの便で、出口へ向かう通路を歩いていたら途中の係員が「宮崎へお乗り継ぎの方、お声がけください!!」と叫んでいた。女性客が係員に向かって走っていく。乗ってきた機材でそのまま宮崎へ戻る。同一区間を何回も往復することで搭乗回数を稼ぐ「修行僧」にとっては福岡・宮崎便はウルトラ先得で片道4,800円という格安区間となっており、ゆえに同区間は「聖地」と呼ばれている(らしい)。

年間にJAL便を中途半端にチョコチョコと乗るならば、ある時期に集中して搭乗してJGCステイタスを獲得してしまって、あとはLCCと使い分けながらコストを抑えていく方が賢い乗り方だろう、という考えで始まった今回の企画だが、同じことを考える人が実はいっぱい居て、しかし同一区間を無駄に乗りつぶさねばならないという精神的・肉体的苦痛を味わうから「JGC修行」と名づけられているということは、私もこの企画を思いついた後に知ったことだ。

さて。
次のフライトまで時間があるので、15:18の宮交バスに乗車して宮崎駅へ向かう。
1998年に宮崎を訪れた景色を思い出しながら、40分ほどで宮崎駅に到着。

確かにカリーノがあったり、九州っぽいのは九州っぽいのだが、同じ九州でも東と西では異文化なので宮崎はまた宮崎独特の街並みと人の流れになっているような気がする。

宮崎駅のKFCでサンドセットとコールスローのランチを買って、リッチモンドホテルへチェックイン。
宮崎は民放のテレビが2局しかない。TBS系とフジテレビ系の2局で、それぞれの局で日テレ系とテレ朝系、テレビ東京系の番組を入り混じって放送している。

部屋でケンタッキーを食べながら「L4you」の砂町銀座特集を見る。砂町銀座の特集なんて組まれても、宮崎県民はさっぱり分からないだろうに。

そうこうするうちに出発の時間。17:04の宮崎発のJRで宮崎空港へ戻る。宮崎エリアは宮崎駅を中心に昨年11月にSUGOCAがようやく使えるようになった。自動改札が設置されたのもまだたったの4ヶ月前!

当然Suicaも使えるので、ピッと乗車。こういうこと、首都圏の人間にとっては当たり前以前の感覚だが、地方都市では斬新な出来事だったりする。

宮崎空港駅は地方空港では唯一空港ターミナルに直結している駅。福岡空港もターミナルの地下に市営地下鉄が入っているので大変便利だが、宮崎空港駅はいかんせん1時間に1本しか電車が来ない。

【17:50KMI → JAC3638 → 18:40FUK】

夕暮れの有明海を西の窓に望みながら、眼下にK県の「うまかな・よかなスタジアム」や、少し先にK城が見えてくる。九州の日没はまだまだ先だ。

福岡空港第2ターミナルのベンチが空いていたので、そこで某塾通信の資料作りをする。

【20:10FUK →JL3641→ 20:55KMI】

「修行」の疲労のため、離陸時のドスンも着陸時のドスンも気づくことなく爆睡のまま宮崎空港へ戻ってきた。本便も満席。宮崎に住んで、福岡で働くビジネスマンも多いのだろう。もちろん、「修行僧」とやらもここに大勢まぎれている。

宮崎空港線の最終は21:37。ローカル線の難しさは、途中駅で開かない扉があったり、停車位置がホームに書いていなかったり、車内で整理券を取らないと精算出来ない区間があったり、宮崎市内エリアはSUGOCAが入ったからいいけれど、エリア外に出たら安心して電車に乗れる自信は、無い。

宮崎駅内のKFCの隣にミスドがあって、23時まで営業と書いてあったので夕食。「旅行」ではないから、冷や汁もチキン南蛮も食べないぞ!

宮崎は橘?の方に繁華街があるらしいが、駅前は至って閑散としている。リッチモンドホテルの近くにマックスバリュが24時間営業で立地していたが、それ以外は県庁所在地の駅前でもマンションか駐車場か空き地か。

宮崎は神話のふるさとではあるけれど、文化的にはそう蓄積の多い地域ではないと思う。だから土産物もそんなに重層的ではないし、むしろプロ野球やサッカーのキャンプを誘致したり、現代の地域おこしの努力が強く伝わってくる。「宮崎ブーゲンビリア空港」の演出もまさにその一環だろう。

K県なんかは加藤清正とか安土桃山以降の文化が集積しているので、同じ九州でもそういった対比は興味深いものがある。

さて。
「よし、部屋帰ってドォーモを見るぞ!」と意気込んでホテルに戻るが、TBS系とフジテレビ系の2局しかない宮崎県。九州における朝日系列のKBC「ドォーモ」の放送が無かったのだ。どういうわけかどちらかのチャンネルで大阪の朝日放送「探偵ナイトスクープ」を再放送していたので、仕方なくそれを見る。

若い人がテレビを見るかどうかはともかく、テレビでさえこういう状況なら、若い人は西九州の方に、または大阪・東京の大都市に居場所を求めてしまうだろう。「自分ならドォーモの放送エリアに住むだろうな」とムニャムニャ考えながら眠る。

【08:40 →JAC3622→ 09:30FUK】

翌朝、6:30起床で7:14の宮崎発汽車に乗る。そう、汽車だ。宮崎駅には電化されていない車両も来るのだ。ディーゼル音に朝からテンションが上がる。

隣の南宮崎で宮崎空港行きに接続。朝とはいえ7:14の次の宮崎空港行きは9:36なので早め早めの行動が必要。馴染んでしまった5番搭乗口で時間をつぶす。

福岡空港に着いて、早速地下鉄へ。やっと福岡空港の外へ出る。博多駅の阪急がちょうど開店した時間なので、地下1階の「りんごの下」でメロンジュースの一番小さいのを飲んで小休憩。九州新幹線へ向かう。

そんなこんなで羽田に戻る便を含めて今回7回搭乗。今月同じことをもう1セットの予感。(いや、予定)