新春事件簿

ある家庭がホームページから体験入塾を申し込んできた。
こちらから確認の電話を入れて、「保護者面談→体験授業」の流れについて説明する。

面談の当日。
「午後3時30分で」ということを確認の電話で念を押しておいたのだが、午後3時に来塾。
「午後3時だと思っていた」と言い張るが、まあ、いいとしよう。

午後3時過ぎに面談を開始し、かかった時間は1時間40分程度。
母親は一方的にいろいろと話した後に、

「で、こちら(の塾)はどういった指導を?」と聞いてきた。

あらら。ホームページから申し込んできた割にはホームページを読んでいないらしい。
「よく分からなかった」とか言っているが、そもそも読む気もなかったのだろう。

子供のことについては
○娘は現在中1だが小学5年の計算が出来ていない
○学校のワーク等の提出物をほとんど出していない
○iPhoneを与えて、毎晩8時に親に預ける約束になっているが娘が預けてくれず、iPhoneで遊んで夜更かしをしているようだ。2学期の学校は70日中30日が遅刻になっている

要はこの3点が問題だということだった。
後者については「そんなもの、親が強制的に取り上げればいいんじゃないですか?」とこちらは言いそうになったが、ひとまずグッとこらえておいた。

さて、面談の2日後、体験授業を組むことになった。
体験授業といっても、当方の体験は学力診断をかねており、英・数・国の基本的なプリントを解いてもらうことにしている。

その体験に時間通りにやってきたのはいいが…。
鉛筆すら持たず、手ぶらでやってきた。

父母同伴でやってきて、その父母は「授業見学をしたい」と言って教室に入ってくる。
その父母は「鉛筆くらい持ってこなきゃ駄目じゃないか」と、娘に声を掛けることはない。

塾の鉛筆を貸し出す。

問題プリントを解くのに時間がかかり、予定の60分よりも30分近くオーバーした。
その生徒を先に退出させて、母親にプリントの採点結果と入塾した場合の今後の組み立てについて説明する。

この母親は、自分の関心のあることは一気に話すが、
こちらからの説明に対してはあまり反応しない。「ああ、そうですか」程度だ。

自分のことで精一杯で、あまり他人に関心を持たないタイプの人だろう、と推測する。

この母親の帰りがけ。
「娘はあまり気が乗らないとか言っているんですけどね…」

あーはいはい。である。

その日の深夜、入塾をしたい旨を伝えてきたので、
入塾についての説明をメールで送る。

こんな感じだ。


ご入塾にあたってのご案内をさせて頂きます。

基本の授業日時ですが、「毎週*曜日・*曜日の**:**-**:**」にてお願いしたいと考えております。
初回を*月*日(*曜日)として、今後の予定は以下のようになります。

*月*日(*曜日)**:**-**:**→*月*回目
*月*日(*曜日)**:**-**:**→*月*回目
*月*日(*曜日)**:**-**:**→*月*回目
*月*日(*曜日)**:**-**:**→*月*回目
*月*日(*曜日)**:**-**:**→*月*回目

向こう半月程度の予定は、初回授業時にお渡し致します連絡ファイルに随時記入してお知らせ致します。
尚、*月分授業は*回、*月分以降は月*回にて予定して参ります。

授業日程につきましては、途中イレギュラーに休塾日を挟む場合、また塾都合による変更をお願いすることがありますが、塾からの変更は遅くとも1週間前にはお知らせしますので、授業直前で変更をお願いすることはありません。

また、夏休みのご旅行・ご帰省など、ご家庭のご都合もお知らせいただけましたら、事前に日程調整が可能ですので、お分かりになり次第お早めにご連絡をいただけましたら幸いです。

授業回数のカウントについては、月8回設定ならば、この回数を確実に消化するという意味になります。
連絡ファイルに毎回、「○月○回目」というカウントを記入致します。場合によっては例えば*月分を*月下旬から実施するような形も有り得ます。

お月謝につきましては、*月分を回数割りにて「**円」とさせて頂きます。*月以降は毎月「**円」となります。

プリント・設備・光熱費につきましては*月分よりご納入頂きます。*,*,*月分で「**円」となります。

従いまして、初月は上記合計「**円」をお納め頂きます。
初回授業時に連絡ファイルに添付して月謝袋をお渡し致しますので、2回目の授業時にご持参下さい。

教材については、面談時にお知らせ致しました通り、市販教材「**」を数分冊購入させていただく場合があります。こちらについては購入後に実費をご請求申し上げます。

初回授業時には、「入塾申込書」「塾規約(水色)」および、先日お話させて頂きました通知表・定期テスト成績表等をお持ちでしたらご持参下さい。

以上となります。

ご不明な点がございましたら、お手数ですがお尋ねください。
また、ご都合の合わない点などもお有りでしたら、お知らせ頂けましたら幸いです。

それでは以上ご確認のほどを宜しくお願い申し上げます。

そういえば、面談時には通知表・定期テストの成績表のコピーを持参してもらうことになっているのだが、
この家庭はなんだかんだと言って面談時には持ってこなかった。これがないと具体的な話が出来ない。

さて、先ほどのメールに対して返ってきたのは


承知いたしました
よろしくお願い致します。

この2行だけだった。
まあ、「承知いたしました、よろしくお願い致します」と核の部分を伝えてきているのだから
取り立てて問題はない。

ただ、こういう時にどういう返信を送れる親かどうかで、
今後の先行きが何となく見えてしまうところがある。

「なんだ、特に問題ないじゃないか」と、これを読んだ一般の人はたぶん思うだろう。
もちろん、メールを使いこなせていない親もいるので、完璧な反応を期待しているわけではない。

でも、ここでもう一言二言、言葉を添えられる親であれば
そういう親の子供の指導は成功する確率が非常に高くなる。

これは、抽象的な言い方になってしまうが、ひとつの「センス」の問題ではあるのだ。

その後に追加して


ご確認有難うございました。
以下、昨日のお知らせに付記させて頂きます。

授業内容ですが、数学(算数計算からの開始)および英語の2科目並行にて進めて参りますが、
先日の体験授業の後にお話させて頂きましたように、学校の授業に追いつくまでには今しばらく時間を要する見込みです。次回の学年末テストには対策が届かない可能性が高いことを予めご承知おき願います。

授業終了時間ですが、当面の間は定時での終了を予定しておりますが、
今後通塾に慣れてくるに従い、授業延長を行う場合があります。

従いまして、日によって授業終了時刻が異なる場合が出て参ります。
もしお車でのお迎えをして頂けるようでしたら、授業終了時にお子様からご家庭へ電話連絡を入れて、その後お子様には教室にてしばらく自習をさせ、お迎えに見えた後に退出していただく流れがスムーズかと思います。

この点の扱いについて、ご家庭でお子様と相談して頂けましたら幸いです。

尚、明日の初回授業にあたりましては
塾規約の「あいさつ」関係の項目をお子様に今一度確認をさせるようご指示をお願い致します。
筆記用具も必ず持参させて下さい。

それでは、明日19:30にてお待ちしております。

というメールを送った。


承知いたしました
明日行く前に確認させます
よろしくお願い致します。

という3行が返ってきた。
これも一見すると、特に目くじらを立てる内容ではないと思うだろう。

しかし、だ。
塾規約というのは入塾および通塾にあたって大切な約束事項を書いてある。
それを「明日行く前に確認させます」と、手軽感丸出しで書いてしまうところに、塾を舐めている姿勢が(本人はそう思っていないだろうけれども)見て取れてしまうのである。

大切な約束事は、前もってきちんと確認をするのが道理だろうと、こちらは考えているから。

この時点でこちらの頭の中では危険信号が既に黄色に灯っているのだが、何はともあれ入塾の準備を進める。

初回授業の日を迎えた。
小学校の計算から復習する必要があるので、日中書店に出向き、某市販教材3,345円分を購入する。

当日は19時30分が授業開始時間である。
18時45分に神社の代表電話に、その母親から電話がかかってきた。

大体、この時点で母親は話を聞いていない。
電話は代表電話ではなく、こちらの携帯電話に直接掛けるように伝えている。

初めての問い合わせでもない人間が代表電話に連絡してくるのは、正直迷惑である。

黄色信号がますます赤色に近づいていく。

トラブルを起こす親がしそうな行動を次々に仕掛けてくる。

授業の合間を見て、その母親に電話を折り返す。

すると、
「塾規約を読んでいたら、疑問に思うことが二つ出てきた」と言ってきた。


第3条
(3)生徒が宿題を終えていない場合はその日の授業を中止し、授業カウントのみ行う

第8条
(3)指導者の指導意欲を低下させ、指導継続を困難にさせる事象を生徒または保護者がもたらしたと塾が判断した場合は指導を即座に中止する。ただし、既に設定されていた予定授業のキャンセル料金として中止日から30日以内の授業料金を保護者は塾に支払った上で退塾とする

この上記2点に噛み付いてきたのだ。
塾規約について噛み付いてきた親は、過去86名を入塾させてきた中で初めてである。

「これ、厳しすぎると思います」

「娘は学校の宿題も出せていないのに、塾の宿題を終えていなかったら授業を中止するとか、授業カウントをするとか、それはどうかと思います」

と。

また、第8条の(3)を音読した上で、この項目は酷い措置であると伝えてきた。

「いや、これらの規約はかつて非常に悪質なご家庭があったので、それらを防ぐ意味であえて厳しく書いているのですよ、実際に適用した例はほとんどありません。そして、宿題についてもあくまで程度問題であって、入塾早々いきなり大量の宿題を出すわけではないのですから、出来る範囲から進めていって、それでも出来ない場合の最悪の措置に過ぎません」とこちらは返す。

「夫に代わりますから」

と、今度は父親が出てきた。

「あの、規約を読んだんですけど、この…(第3条)と…(第8条)の言っていることが厳しすぎて、このままでは受け入れられないんですよ」

と、のたまう。ちなみにこの父親は韓国人である。韓国人のことを悪く言いたくはないが、こういう時に、韓国人…面倒くさい…と思ってしまう。

何年か前に韓国人を母親に持つ中学3年生を受け入れたことがあったのだが、低所得世帯を対象とする私立高校入学の助成金についての話になって、「助成が出て自己負担はほとんど要らないから」と、それは助成してもらえることに対する謙虚さではなく、「こっちは所得が低いんだから、助成するのは当たり前だろ」という、言葉は悪いがそういうニュアンスの態度を感じて、権利をとかく主張するスタンスに嫌気が差したのを非常に強く覚えている。

そんなことを思い出しながら、この父親も「宿題をきちんとする」「誠実に塾に向き合う」という自分側の義務に目を向けずに、「ここでキャンセル料を払うのは承服できない」とかまくし立ててくる。

これから激しさを増す契約社会においては、事前に契約内容を精査するのは必要不可欠ではある。しかし、この家庭の場合は「塾の宿題をしない」「指導者の指導意欲を下げる」ことを前提として入塾しようとしている、ということなのだ。それ以前に「出来るだけ頑張らせますから」という謙虚さが全く見られない。

外部に対して厳しく、それでいて身内の娘のiPhoneをも取り上げること出来ず、娘に提出物さえ全うさせられない親。これはむしろ娘が親の犠牲者であると言って過言ではない。

恐らく、この家庭はどこへ行っても同じようなことをしているのだろう。こんなことでは、マトモな人は相手にしないよね。

韓国人だから、というわけではないが、こういう「義務を全うせず権利を主張する人間」が今の日本で増えているのは本当に嘆かわしいことだ。

「はい、分かりました。ご納得いただけないようでしたら、入塾は取りやめになさった方が宜しいかもしれませんね」と伝えると、

「そうした方がいいでしょうね」と、この父親はさも自分が正義を貫いたような口調で言ってくる。

そんなこんなで
電話をしている時は赤信号からさらに頭に血が上って、
電話を切った後も、しばらく冷静でいられなかったのだが、

平成26年度はこういうケースにさんざん振り回されたし、退塾者もかつてないほどに出した。またしても新しい出来事を経験してしまったなということで書き留めておくことにした。

市販教材の購入費3,345円も回収出来ずに、それどころか月謝袋、諸帳簿も無駄になった。

神職の端くれとして、こういう時に自分が精神の平穏を取り戻しやすいのは、例えば「因果の法則」みたいなものがあることを知っていて、それを信じているから、こういう自分勝手な家庭にはそれなりの因果応報があるよね、ということだ。それはそれで気の毒だ、という考え方になってくる。

また、あれから数時間が経って思うことは、
塾規約というコンプライアンスを作っておいたからこそ、こういうどうしようもない家庭が塾に侵入するのを防げたという考え方も出来る。そういう点で、塾規約を固めておくことは非常に大切だということを実感したのである。

規約、契約書、そういうことに縛られるのは嫌だが、それらが防波堤となって自分の身を守ってくれることは言うまでもない。まして得体の知れない輩が増えている現代では、自分の身を守ることをまず第一に考えなければならない。

いずれにしても、
「以心伝心」とか、「気は心から」とか、「謙虚さ」とか、繰り返しになるが「権利を主張するのは義務を全うしてから」とか、恐らく従来の日本人が大切にしてきたであろう心の持ち様がどんどん崩壊する方向に進んでいるのは間違いないだろう。

まあ、それにしても、だ。
この父親はさんざんまくし立てて、その先に何を求めていたのだろう。こちらが「はい、分かりました、規約は撤回します」と言うとでも思ったのだろうか。

そんなことになる訳ないのに、こちらが途中で話を切らなかったら、延々と自分の主張を続けていたのだろう。何を目的に塾へ問い合わせてきたのか。娘の現状を打破したかったからではないのか。そういう道理の見えない人間は、『残念!』としか言いようがない。