血の流れない人殺し

入室して「こんばんは」が言えない、
椅子を仕舞えない、
月謝袋を片手で「はい、お金」とぶっきらぼうに渡す、

旧先方の教室の生徒なのだが
3月に開始して2週間後の授業中に居眠りをし始めたので
怒鳴りつけて帰宅させたこともあった。

その生徒は中学3年の男子。
指導開始して2ヶ月経っても

少年=doy
少女=garu
鳥=darb
犬=bog
バス=desu
列車=toren
牛乳=melk
机=besku
何=wate
2=twu
3=taten
5=faev

英単語はこんな調子だし、当然文法も滅茶苦茶なので
「You are kind is old people.」

と書いている。

47都道府県名と県庁所在地の暗記テストを行ったのだが
全部書けるまで9回再テストを必要とした。

それでも、その後間を空けて確認テストをすると
福岡県と福井県が逆になっていたり、
愛媛県の県庁所在地が「松前市」になっていたり、

和歌山県と書けずに「和歌川山」。
前橋市がある県を「群長県」と書いてしまっている。

数学も同様に、2乗3乗が抜けていたり、
「-4x+9y」と書くところを「-4x9y」とプラスの符号を抜かしたりしている。

で、
これがK塾の新入塾生であれば、軽度知的障害またはLD(学習障害)の可能性を疑って、専門機関への受診を保護者に打診することも出来る。

ところがこの生徒は旧S塾に小学5年の2011年から通っている。
そして塾内模試も受けているし、そこでは社会科で「五人組」とか「過密」だとか書けているから5科で偏差値40~50(実施回によってバラつき)が出ているし、表面上はこの生徒が何らかの異状を抱えていることは気づかれないのかもしれない。

しかしだ。
普通に金をもらってプロの看板を出して仕事をしている塾屋が、冒頭の英単語や「群長県」のような分かりやすいミスを見逃すはずがない。まして4年も旧S塾に通っていれば、その生徒から何らかの問題点を感じ取るのがプロの仕事というものだ。

ところがそういうバグすら気づかない、発見できないまま4年も放置しておいて、挙句の果てにまともな挨拶も学ばせず、月謝袋も正しく渡せない、椅子も仕舞えないという、ただ「楽しいね」「頑張っているね」という生ぬるい環境のままでやってきた旧教室担当者のアホさ加減にはらわたが煮えくり返る思いなのである。

で、家庭も家庭で、こちらがいざ「これはまずい」と問題点を指摘し始めると、最初は同調していても次第に態度を硬化させていく。「今までは問題なく来ていたのに、何で今更問題があるというの?」という感覚があるのだと思う。(または現実を突きつけられて、どうしたらよいのか分からなくなってしまうのかもしれない)

そしてその生徒が新しく私のK塾に新規入塾して来るならば、環境や指導体制も心機一転してその生徒自身も気持ちの区切りがつけただろう。しかし今回のように教室譲渡という形での指導体制変更であれば、その生徒にとっては通う教室はこれまでと変わらないわけだから、「先生が変わったな」程度の認識でしかない。

そんなこんなでボタンの掛け違いというか、悪循環の繰り返しになってしまって、ここまで来てしまうと、あまりに悪条件が絡みすぎてしまっていて、どうしようもなくなる。結局その生徒は(こちらにとって非常に後味の悪い形で)退塾することになったのだが、K塾に最初から来ていたらこんなことにはならないのにな、とつくづく思う。

私に言わせると、その生徒にとっての「失われた4年」はあまりにも大きく、実にむごい。

話は変わるが、
K塾の生徒で療育手帳を取得している高校生がいるのだが、
彼も決して軽いとは言えない学習障害で、数学、英語、漢字となかなか習得が容易でない。

その生徒は中学2年で手帳を取得したのだが、
なんと3歳から小学3年まで「くもん」に通っていたというのだ!

「くもん」の指導者は何をしていたのか!
その生徒のどこを見ていたのか!

金だけもらって、生徒の核心部分も見抜けない低能な塾屋は(言葉は悪いが)殴り殺してやりたい、と本気で思う。だって生徒を殺しているんだから。